体重が急激に増えてしまったと相談してこられた患者さんが先日いらっしゃいました。
外食が続いて食事量が多かったことと、食後のデザートを毎回欲張ってしまったと自覚されていました。
どれだけお腹がいっぱいでも「デザートは別腹なのよね」とよく聞くセリフの後に「先生なんでなんだろう?」と質問があったので、今日はその時に説明した内容を書こうと思います。
空腹感と満腹感について
まず基本的なことですが、空腹感や満腹感は身体の様々な機能の司令塔である脳の視床下部が送る信号によってコントロールされています。
視床下部には空腹感を生み出す神経細胞が集まる摂食中枢と満腹感を生み出す満腹中枢があります。
栄養やエネルギーが必要な時は摂食中枢の働きが活発になり、食事で十分に栄養が満たされたときは満腹中枢が働き、食べるのを抑えています。
食欲に関係する脳の前頭連合野
食欲に関係する場所がもう一つあります。
それは大脳の前方にある「前頭連合野」という場所です。
前頭連合野は物事を考察するような知的な活動を担う場所ですが、おいしいかまずいかなどの判断をする(第二次味覚野)場所でもあります。
また、食べ物の味や、におい、食感、見た目、温度など、食べ物の情報を総合的に記憶したり、とてもおいしいけど太ってしまうから我慢しよう、といった欲求を理性で抑えてコントロールしたりしているのも前頭連合野です。
別腹と感覚特異性満腹
ではやっと本題ですが、なぜ満腹でもデザートは食べれるのでしょうか?
それは食事量で満たされることによる満腹とは別の「感覚特異性満腹」が関係しています。
例えば、いくら好きな食べ物でも甘いものをずっと食べ続けると飽きて食べれなくなりすよね?逆に塩気のある食べ物も同じだと思います。
同じ系統の味に飽きて感じる満腹感を感覚特異性満腹といい、主食やおかずに甘いものやデザートに似た味のものがなければ、感覚特異性満腹はおきずにデザートは食べれるわけです。
前頭感覚野がさらに別腹のスペースを作る
そしてもう一つの理由として、前述した前頭感覚野の働きが関連しています。
というのも、神経細胞が「おいしい」という信号を摂食中枢に送ると、「オレキシン」という物質が放出されます。
すると、胃の運動に働きかけ、胃の入り口付近の筋肉を緩めるとともに出口付近の動きを活発にし、食べ物を入れるスペースを作るのです。
これが別腹の正体です。
些細な質問も遠慮しないでください。
長くなりましたが、読んでくださりありがとうございます。
今回の別腹の話のように些細なご質問にも、丁寧にご説明するようにしています。
身体のことはは宇宙のようにわからないことや不思議なことだらけです。
知識や技術の追求は、常に意識を高めて努力し続けていこうと思います。